2025 ICHR: コンセプトノート

2025年国際人権会議:アジアの若者たち

コンセプトノート

*For Concept Note in English:

2025 ICHRは、東アジア若手学術協会(EAYSA)外交政策の若手プロフェッショナル東京支部(YPFP Tokyo)東京大学大学院総合文化研究科人間の安全保障プログラム(HSP)および持続的平和研究センター(RCSP)が共同で主催します

東京大学駒場キャンパス
日本 東京(ハイブリッド)
2025年3月20-22日

背景

人工知能(AI)の活用は、自動車製造のような産業分野から、絵を描くことのようなレジャー活動に至るまで広い用途で顕著になってきている。このようなAIの急速な普及は、テクノロジーが私たちの日常生活に不可欠な役割を果たしていることを示している。しかし、AIの急速な発展は、グローバルな文脈でも、東アジアのような特定の地域内においても人権に対する大きな挑戦である。世界的に、AIの急速な発展は法的な枠組みを凌ぎ、プライバシー、監視、自動意思決定による偏りに関する懸念が高まっている(Bradford, 2023)[1]。これらの問題は、民主的なプロセスを弱体化させ、社会的な不平等を加速させうる。AIがしばしば個人の自由を犠牲にして、安全保障や社会的な安定のために利用される東アジアにおいて、この挑戦は統治モデルの違いによってもさらに複雑になっている(Center for Ai and Digital Policy, 2024)[2]。地域的にも世界的にも、イノベーションの促進と基本的人権の保護のバランスをとることが現在も課題となっている。

独裁的な権力と統治モデルの継続的な拡大は、世界的に民主主義と人権の促進に絶え間ない脅威をもたらす。しかし、懸念が高まっている他の問題として民主主義における極右と極左集団の台頭が挙げられる。ヨーロッパの31カ国におけるデータセットによると、極左と極右政党への投票率は1990年代初頭の12%から2022年には32%にまで増加した(Rooduijn et al.,

2024)。[3]こうした台頭の政治的帰結は、選挙だけにとどまらない。例えば、第77回国連総会に提出された国連グローバルテロ対策戦略に関する事務総長報告(2022)[4]では、テロ攻撃と極右イデオロギーの関係性を認識する必要性が強調されている。極左イデオロギーに影響された犯人が関与する銃乱射事件は警察の死傷者の割合が高い一方で、それに比べて極右イデオロギーに影響された犯人が関与したものが最も重大な結果をもたらしているという証拠もある(Silva, 2022)。[5]イギリスで2024年8月に起きた極右と極左集団が関与する抗議と暴動は彼らが難民や移民、民主主義にもたらす脅威の新たな事例となった。また彼らはテクノロジーと偽情報が感情の動員と衝突の悪化にもたらす役割の大きさを示している。日本やその民主的隣国において民族多様性と政治的に過激な状況は比較的少ないが、極左または極右に影響を受けた事件が国境を越えて潜在的にどのような意味を持つのかは考える価値がある。

目的

私たちは、グローバルな問題に対する日本及びアジアの視点を優先するフォーラムを提供することを目指しています。これらの視点は西洋の視点が優先される西洋のフォーラムにおいて軽視される傾向にあります。私たちは、世界中の学者からの投稿を歓迎しており、経験豊富な研究者も新進の学者にも、我々の時代の最も深刻な人権問題について議論する場を提供します。

構成

このカンファレンスは、二つの主題領域に分けられます:現代社会と、民主主義と専制政治です。それぞれのサブテーマに基づくトピックは以下の通りです。

現代社会

  • テクノロジーと人権
  • 気候変動・人道的活動
  • 不平等と教育
  • ジェンダーと紛争
  • ビジネスと人権

民主主義と専制政治

  • 民主主義の動揺と専制化
  • 移民と多民族民主主義の持続可能性
  • 難民
  • 極右、極左、政治的分極化
  • 検閲と表現の自由

議題提案

上記の各テーマを踏まえたあらゆるトピックの投稿を歓迎します。特に、若手研究者からのの投稿を期待します。

以下の議題リストに日本、そして東アジアを中心とした人権問題のテーマをいくつか提案します。ただし、リストに含まれていないトピックの投稿も大歓迎です。

現代社会

  • AIと倫理/人権
  • ディープフェイクと偽情報
  • 多文化社会におけるヘイトスピーチ
  • 安全保障と人権保護の緊張関係
  • 東アジアにおける移民政策の潮流と変化
  • 人権の促進のための多国間協力

民主主義と専制政治

  • 新疆と香港における人権の保護
  • 台湾、韓国、アメリカにおける分極化
  • 極左または極右イデオロギーに影響された社会運動
  • 民主的転換におけるメディアの役割
  • ポスト専制政治の民主化
  • 政治的世俗主義の理論と実践
  • 分断社会におけるコンソーシエーショナリズム/パワーシェアリング
  • 社会経済的な不平等と平等の保護

イベント詳細

  • 2025年3月中旬に東京大学駒場キャンパスにてハイブリッドで開催予定
  • 論文の投稿と会議プレゼンの概要は世界中の申込者に公開されます
  • 会議は無料で参加できます。発表者および参加者には登録費用はかかりません。
  • 採用された投稿には会議中に対面またはオンラインで発表する機会が与えられます。
  • フルペーパーは受理されません。

コンファレンスマネージャー:

ヒリックス ロー、東京大学

お問い合わせ先

2025年ICHR運営委員会に連絡する前に、必ずFAQページをご確認ください。


[1] Bradford, A. (2023). Digital empires: The global battle to regulate technology. Oxford University Press.

[2] Center for AI and Digital Policy. (2024). Artificial intelligence and democratic values 2023. Center for AI and Digital Policy.

[3] Rooduijn, M., Pirro, A. L. P., Halikiopoulou, D., Froio, C., Van Kessel, S., De Lange,    
S. L., … Taggart, P. (2024). The PopuList: A Database of Populist, Far-Left, and Far-Right Parties Using Expert-Informed Qualitative Comparative Classification (EiQCC). British Journal of Political Science, 54(3), 969–978.

[4] Secretary-General, U. N. (2022). Terrorist attacks on the basis of xenophobia, racism and other forms of intolerance, or in the name of religion or belief: report of the Secretary-General. https://documents.un.org/doc/undoc/gen/n22/450/52/pdf/n2245052.pdf.

[5] Silva, J. R. (2023). Ideologically motivated mass shootings: a crime script analysis of far-right, far-left, and jihadist-inspired attacks in the United States. Journal of Policing, Intelligence and Counter Terrorism18(1), 1-23.